福江 充著『近世立山信仰の展開』
評者:西海 賢二
掲載誌:日本民俗学232(2002.11)


 一九九八年の前著『立山信仰と立山曼陀羅−芦峅寺衆徒の勧進活動−』(岩田書院)の刊行(第九回日本山岳修験学会賞受賞)では、主に信仰対象としての立山を管理する、芦峅寺という宗教組織をめぐっての考察と、立山曼陀羅に関する考察であった。それから四年、立山信仰の伝播者である芦峅寺衆徒が近世期に尾張・信濃・下総・安房・江戸・加賀を中心に形成した檀那場の実態(檀那場の規模・檀家の分布・檀家の身分傾向)や、同地で起こった廻檀配札活動の実態とその地域的特徴を明らかにしたのが本書である。(中略)

 これまでの立山信仰は信仰対象としての立山を管理する側からの研究が主流であったのに対して、本書は芦峅寺衆徒が近世期に東国を中心に檀那場を舞台に行った廻檀配札の解明が始めてなされたものであり、これまでの一般論的なかつ漠然とした東国の立山の信仰(血盆経など)を具体的に論じた著書である。本書の刊行によって、近世期における立山信仰は飛躍的な展開をみせるであろう。


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