荒川 善夫 著 『戦国期東国の権力構造』
掲載紙・下野新聞(2002.4.17)

 宇都宮高通信制教諭の荒川善夫さん(四八)=駒生二丁目=はこのほど、史学博士の学位を中央大学から取得した。研究対象は戦国時代の下野国の権力構造で、那須氏や宇都宮氏など中小大名の歴史的な性格を明らかにした。県教委によると、現役の高校教諭が博士号を取得するのは極めて珍しい。休日を返上し、四年間にわたって研究を続けた成果だ。

 荒川さんは一九七七年に宇都宮大教育学部を卒業し、日本史を教えている。八四年、同大の恩師に誘われて小山市史の編さんに参加。野木町など県内郷土史の編さんにも携わった。
 学業と研究の両立が大切と考えた荒川さんは、四年ほど前に博士号取得を決意した。当時は病床にあった父を亡くした時期で、古文書を見たり、仲間と歴史談議をしているうちに心が癒されていったという。「自分には歴史学しかないと思った」と振り返る。
 論文の題名は「戦国期東国における地域権力の構造─下野国那須・宇都宮氏を中心に─」。あまり研究の手が伸びていない那須氏と宇都宮氏が主な題材。戦国時代の那須氏などの勢力は、独自の家臣を持つ一族よりも、自前の直属家臣にウエートを置いた権力編成で難局を乗り切った─などを明らかにした。
 現地調査のために那須町や茂木町などを往復し、和歌山県の高野山などにも足を延ばした。
 学位授与式は先月中旬に行われた。「これがゴールではない。苦しくても着実に研究活動を続けた」と話す。また自分が目にして感動した古文書があったことから、半永久的にさまざまな視点から閲覧できるよう、史料の保存運動を行っていく考えだ。

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