四国地域史研究連絡協議会編『戦争と地域社会−慰霊・空襲・銃後−』 |
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評者:芳地智子 |
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「地方史研究」357(2012.6) |
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本書は、二〇一〇年七月に徳島市において開催された、第三回四国地域史研究連絡協議会(徳島大会)「近代四国における戦争と地域社会」の成果をまとめたものである。 高知県における日露戦争戦没者慰霊(小幡尚・高知県) 小幡報告は、高知県における日露戦争戦没者慰霊の具体相を、遺骨の帰還から葬儀・埋葬に至るまでの過程に着目して検討したものである。亡くなった兵士がそれぞれの故郷でどのように弔われたかを、当時の地元新聞を主たる史料とし、また具体的な数値を示して論じている。陸軍省の規則では、遺骨の埋葬は陸軍墓地を原則とするものの、遺族への遺骨下付も認めており、ほとんどの遺族が下付を望み、軍の手を離れた遺骨の帰還儀式、葬儀(公葬)・共同墓地への埋葬には、地域の軍事援護組織が深く係わっていたことを明らかにし、高知県の戦没者慰霊のあり方の「原型」を示している。 本書の四本の報告では、戦時下における各地域の特色が明確に示されたが、さらに県を越えて他地域との比較研究が進むことが望まれる。研究大会の成果が一冊にまとめられることは、当日参加できなかった者にとっては本当に有難い。二〇〇八年に発足した四国地域史研究連絡協議会による刊行は、高松大会の成果である二〇一一年三月の『四国の大名−近世大名の交流と文化−』に引き続き、二冊目である。すでに昨年開催された高知大会の成果本の刊行も決定しており、今後も同協議会の四国地域における継続的な活動に期待したい。 |
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