全国歴史資料保存利用機関連絡協議会近畿部会編『時を貫く記録の保存』

評者:亀岡哲也
「THE NEXT SHIGA 滋賀地方自治研究センター研究紀要2010」(2011.6)

 日本におけるアーカイブズ専門団体の嚆矢である全国歴史資料保存利用機関連絡協議会において、地域部会としては関東につづく二つ目として1993年に設立された近畿部会が研究例会100回を記念して開催した2009年7月の公開シンポジウムの記録である。この節目がアーカイブズ分野においてひとつの時代画期となるであろう公文書管理法の成立と重なり、この企画に結実したことも歴史のもたらす奇縁であろうか。
 内容は、書名にもなった国立公文書館の高山正也館長による講演「時を貫く記録の保存」と、京都府立総合資料館の井口和起館長(当時)と高山館長との対談「国立公文書館と自治体公文書館−公文書と地域資料−」、近江八幡市史編纂室の烏野茂治氏による報告「全史料協近畿部会の歩み」およびパネルディスカッションによって構成されている。個々に触れる紙幅はないが、公文書館行政としては海外諸国にくらべて不十分な日本、その中でも自治体公文書館の設置が進んでいない近畿においても、例会活動を中心に近畿部会が奮闘し積み上げてきたものは相応の評価に値することが確認できる冊子となっている。私事であるが、紹介子も設立時に活動にかかわっており、報告で経過が集約されたことは喜ばしく思うところである。
 シンポジウムから若干が経過し、本書は法の成立からいよいよ施行をむかえた段階での刊行となっている。法の目的にうたわれる、公文書は「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得る」ものとの認識の普及のために本書のご活用を広くお願いしたい。


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