西沢淳男著『幕領陣屋と代官支配』
評者・斎藤 司 掲載紙(地方史研究277 .99.2 )


このたび、本年十一月付で岩田書院より、近世史研究叢書4 として、西沢淳男氏の『幕領陣屋と代官支配』が刊行された。本書は、近世中後期における幕府代官や陣屋の研究を精力的に行っている西沢淳男氏が従来の成果を一書にまとめたものである。
本書の構成は次の通りである。
(目次省略)
序章では、従来の幕府領・代官研究を概観し、幕府の陣屋・代官に関する基礎的なデータ収集や分類・統計作業が進んでいない現状を指摘している。これをうけて、第一部ではコンピューターを利用してデータベース化した幕府の代官・陣屋に関する膨大な関連資料・情報の分析を基礎に、奥羽筋・関東筋・北国筋などといった地域ごとにおける陣屋の変遷と特質、及び郡代・代官就任者の家禄・昇進等の検討を行っている。なお、この際、使用されたデータについては、付録CD-ROM 「幕領代官・陣屋データベース」に所収されている。このCD −R0M の作成過程や利用方法については付論に詳述されている。また、第二部と第三部は、それぞれ近世中後期の関東地域や信濃国の幕領・陣屋・代官について検討したものである。
以上のように本書は近世において全国的に展開していた幕府領の意味や代官・陣屋支配のあり方を理解する上で、基礎的なデータを提供しているものである。また、その点をふまえた個別分析においても、今後の当該研究の一指標となるものである。このように本書は全国各地の地域史研究の進展に欠かすことのできないものであり、多くの方々の座右におかれるべきものと思われる。
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