大濱他編『日本宗教史研究文献目録』第2巻
掲載誌・社寺史料研究会会報No.6(2000.10)

『日本宗教史研究文献目録』第2巻の刊行をめぐって

『日本宗教史研究文献目録』第2巻が、2000年2月に刊行されました。本目録は、1995年に刊行された第1巻をうけたものです。文献目録の刊行は、日本宗教史研究会が昭和46年に編集した『日本宗教史研究入門』(笠原一男編、評論社)にさかのぼることができます。これは、いわゆる戦後の宗教史研究を時代別・著者別に整理し、1945年から1970年に至るまでの研究状況を知ることのできるものでした。この書は、研究史として戦後の日本宗教史のみならず日本史の研究者がどのように宗教に対峙してきたかが読みとれるものです。1950年代の新宗教時代の到来をうけて、1960年代から70年代のにかけての日本宗教への本質的理解が希求されている状況の成果です。いわゆる宗教(史)ブームの先駆的な刊行物といえます。そのため日本宗教史研究だけでなく多くの分野における「入門講座」なり、「研究史シリーズ」の嚆矢的存在となったといっても過言ではありません。その後、宗教史研究を時代別・著者別に整理して概観するという作業は、1978年から刊行が開始された『日本宗教史研究年報』第1号に継承され、1986年の第7号をもって幕をとじました。『年報』は、巻末に著作論文目録を掲載するために、日本宗教史研究年報編集委員の名のもとに全国の宗教史研究者へ直接にアンケートを配布するという地道な営みから生まれたものです。しかし、諸般の事椿によって、1986年の第7号をもって廃刊のやむなきにいたりました。日本宗教史研究年報編集委員は、廃刊の善後策を検討するなかで、先の『日本宗教史研究入門』の後継的なものとして、これまでの『年報』の成果を集成するような宗教史研究の文献目録の刊行を新たに企画し、1971年から87年までの研究を集成した『日本宗教史研究文献目録』第1巻としてまとめました。『日本宗教史研究入門』の後を襲うべく昭和46年以降の研究成果の集成を、『年報』の版元であった佼成出版社のご協カを得て、圭室文雄・宮田登の二氏と大濱を中心に日本宗教史研究文献目録編集委員会を立ち上げ、岩田書院を版元として刊行の準備に取りかかり、文部省出版助成を得て刊行の進捗をはかることができました。これは、第2巻も同様です。
 その第1巻の刊行から早くも五年経過したこともあり、第2巻では、研究文献の所載年代は、編集の都合もあり1987年から1997年までとしました。第1巻と同様に、編集委員を中心に基礎データの収集をはかり、有元修一・鈴木良明・根本試二・古家信平の各氏をはじめとす多くの方々の助言と協力をあおいで完成にいたった次第です。データ収集の基本姿勢は、第1巻と同様ですが、単行本だけてなく雑誌掲載論文、中でも地域史に関わる雑誌掲載論文にも可能な限り眼くばりをなしたために思いの外に時間を要しました。収集には、編集委員の「視野」を以てしたために、異論があるかもしれませんが、「アナログ」的な手法を駆使したことの限界であり、来るべき「IT」時代の21世紀では通用すべくもなく、こうした目録の出版としては、最後の企画やもしれません。しかし、3人の編集委員のアナログ的な「複眼」をもって貫かれた編集方針は、これからも否定されるべきではありません。むしろデジタル的に集成された情報を如何にアナログ的な「複眼」をもって解析していくかが問われています。その意味からも、『日本宗教史研究文献目録』第2巻を単に参考文献を探すためだけではなく、1980年代か90年という宗教的・精神的状況としての「カオス」的な現代日本文化の深層をかいま見る手段として、じっくりと味読いただければ幸いです。(大演徹也〉
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