竹谷靭負『富士塚考』

評者:岡田 博
「富士山遺文拾遺」44 岡田博編集発行(2009.11)

 拓殖大学名誉教授・理学博士、竹谷誠先生が、ご生家富士山御師「竹屋」の重 代当主名「竹谷靱負」の御名でご刊行の三冊目のご本です。最初の『富士山の精 神史』続いた『富士山の祭神論』も、竹谷先生ならではのご本でしたが、この度 の『富士塚考』を閲読、初体験のように書物の「大著」ということは、本の厚さ ではなく、その内容の幅と深さであると痛感しました。
 副題に「江戸高田富士築造の謎を解く」とあるとおり、主題は近世・近代に江 戸・東京・関東諸国諸県に数多く築かれた「富士塚」の第一号といわれる「江戸 高田富士」でありますが、竹谷先生のご追求は「富士講」築造富士塚以前の「富 士浅間勧請」から始まり、高田藤四郎の心願に迄到ります。

 目録章立て紹介だけですが、
 一、富士塚前史―富士浅間勧請
 二、富士塚の淵源と系譜
 三、村山修験の江戸の武家檀所と富士山
 四、江戸大名屋敷と富士塚(一) 加賀藩前田屋敷と本郷富士
 (以下目録中略)
 九、富士講大先達藤四郎と高田富士
 十、藤四郎の高田富士築造の心願―東身禄山

 科学者竹谷誠博士の手法は、過半は「伝承」である中世以来の富士山信仰研究 記述にも、他書や先行研究引用では済ますことは許しません。ご自身で訪ね、同 時代文献を渉猟確認後の執筆です。それが229頁のご本に、「大著」の威厳を備わ せたのですね。


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