装飾の地層
空間史学叢書2

空間史学研究会 編

2015年3月刊
A5判・270頁・並製本・カバー装
ISBN978-4-87294-904-9 C3321
3800円 (税別)
本号巻頭の特集は、2012年8月に開催した第2回空間史学研究会シンポジウム「装飾と空間」をもとに編集した。「装飾」は、しばしば表層的かつ従属的な“かざり”としてみなされることがあるが、泉氏の「山林表象」、窪寺氏の「天井の荘厳」の議論を経たわれわれは、そこに多彩な意味と履歴が折りたたまれた層状の世界を認めることができるだろう。本書を「装飾の地層」と題した理由は、このような目論見と期待に基づいている。
続いて「研究例会」の成果として意欲的な論文5編をご寄稿いただいた。
川口氏は、中国広東省村落の祠堂を例に、「場所」と「空間」の相互補完的なありようを浮かび上がらせている。斎藤氏は、慧能ゆかりの寺院の「場」をとりまく、祖師にまつわるテキスト・イメージの流通を「空間化」として捉える。大山氏は、ベトナム北部の仏教寺院とディンという守護神をまつる集会施設を取り上げ、祭祀の「場」の形成と展開を跡づけた。
以上の「場」をめぐる三編に対し、五月女・赤澤両氏は、自律した二次元空間を有する絵画のうち、絵巻物という右から左へと進行する横長の画面形式をともに扱っている。両論は、絵画の「空間」に「時間」を定着させるありようを論じる点で共通している。
【主要目次】 
特集 <シンポジウム>装飾の地層
山林の絵画表象と仏教荘厳 泉  武夫
荘厳と機能の相関
 −天井の意味を考える−
窪寺  茂
全体討議  
論文
空間/場所論から見た中国の祠堂
 −広東省珠江デルタを事例に−
川口 幸大
広州光孝寺六祖慧能碑と『六祖壇経』
 −空間化されるテクスト−
斎藤 智寛
ベトナム北部村落の寺廟と祭祀空間 大山亜紀子
「彦火々出見尊絵巻」の釣針を取り戻す場面の構図について
 −金剛山寺所蔵「矢田地蔵縁起絵」の授戒場面との類似は偶然か−
五月女晴恵
近世源氏物語絵が描こうとした王朝の世界
 −住吉具慶筆「源氏物語絵巻」にみる貴族住宅・洛外・遊興の表現を通して−
赤澤 真理
【既刊】『痕跡と叙述:空間史学叢書1』 2013年10月刊 2800円(税別)

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