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「語り」をよむ −信越《頸城・安曇》国境の物語− 松本 三喜夫 著 (1950年生まれ) 2013年7月刊 A5判・292頁・並製本・カバー装 ISBN978-4-87294-810-3 C3039 3800円 (税別) |
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「ようやく自分の故郷をテーマとして、一冊をまとめつつあるが、実に長期間を要した。長期間といっても、書くのに時間がかかったというよりも、故郷とどう向き合って、どういう方法で執筆すればいいのか、その思案に時間がかかったといったほうが適切である。 長い時間かかって、ようやくたどりついた私の「思い」を少し語っておきたい。キーワードとして、「語り」、「故郷」、「誇り」の三つを設定した。 まず一点目であるが、本書のタイトルでもある「語り」について、話をしておきたい。 地域の歴史に限らず、専門領域の歴史でも、当然、歴史はその根拠を必要とすることから、一般的には記録文書などにもとづいて書かれることが多い。 私の育った地域では、昭和に入り多くの人びとがあつまり、それまでの伝統的な集落と様を大きく異にしていったところであった。古い神社や寺があるわけでもなく。目立った祭があったわけでもない。取り立てて傑出した人物が出たわけでもなく、大きな事件などできごともなかった。(中略) 長ずるにおよんで、柳田国男の『郷土生活の研究』と出会った。その中には…彼の提唱している郷土生活の研究法が「ゆくゆくは無記録地域の無記録住民のためにも、新たなる歴史が現出して来る」とのべられていた。(中略) …本書でいう「語り」とは、散文伝承、韻文伝承などという形態論ではなく、それこそ地域で人びとによって口で表現されたもののすべてをさす。もちろん昔話や伝説もあり、かすかな記憶もある。語られていたもの、今も語られているもの、忘れられた語りもある。 それらを資料としてみることによって、地域の歴史をどうとらえることができるかを試みた。」(本書「はじめに」より) 前著『絵馬をあるきよむ』 の姉妹編。 |
【主要目次】 |
第1章 かくれ街道をゆく |
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