「関東民具研究会(通称:パラサイツ)は、関東近県の博物館・資料館の学芸員有志ほかで組織される研究会である。これまで、運搬具、クルリ棒、共有膳椀、流通民具(脱穀機)などをテーマに共同研究を行いその成果を報告書にまとめてきたが、2004年からは相模大山(おおやま)をテーマに研究会の開催などの活動を行ってきた。
神奈川県伊勢原市に位置する大山は、別名を雨降山ともいい、雨乞いの山として広く知られる。関東近県の村々では、五穀豊穣や大漁祈願、病平癒といった信仰を集めるほか、一人前や年祝い、死者の百ケ日供養などの諸儀礼ともかかわり、さらに江戸町人の間では現世利益の神として登拝の対象となるなど、地域によって様々な信仰を集めてきた。また、古くから修験道の関与が深く、各地に大山講が組織され、文書記録のみならず、石像や道標など、その活動の跡を示す資料も残されていある。
関東民具研究会での大山の研究会は、このような大山を、個々の会員が活動する地域や、それぞれの関心がある視点から見つめ直し、その情報や問題点を共有化しようとの趣旨で行われた。本会は民具の研究を目的として発足したが、この大山研究においては、敢えて民具という枠を取り外し、幅広いメンバーによる、より多彩な大山へのアプローチを試みた。」(「はじめに」より) |