本書は、幕末から明治期の埼玉県を主たる対象とし、近代の地方行政体における情報の伝達と、その情報を資源として保存利用する記録管理を明らかにするとともに、行政記録に対する近代日本のアーカイブズ認識を考察しようとするものである。
第1編では、幕末の村役人らが有した情報環境について考える。第2〜3編では維新後の地方行政の中心であった府県を、続く第4編ではその監督下にあった郡役所及び市町村を対象とし、活版印刷技術や文書様式の統一などにより情報伝達と記録管理の革新が遂げられたものの、アーカイブズとしての認識は稀薄になっていく変化を追う。終章では、文書館につながる行政記録の公開と理論の萌芽が、戦前の図書館界にあったことを指摘する。 |
【主要目次】 |
序 章 |
アーカイブズ資源と情報・記録研究の現在 |
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第1編 |
幕末の地域情報環境 |
第1章 |
地域における政治社会情報伝達の実相 |
第2章 |
ペリー来航期における名主の黒船情報収集 |
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第2編 |
府県庁記録の成立とアーカイブズ認識 |
第3章 |
明治政府のアーカイブズ認識と記録管理 |
第4章 |
活版印刷技術と情報環境の革新 |
第5章 |
「文書」と「記録」をめぐる概念認識の変遷
―職制規程にみる明治期埼玉県庁の場合 |
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第3編 |
府県史編纂事業と記録管理の相関 |
第6章 |
「府県史料」の性格・構成とその編纂作業 |
第7章 |
府県史編纂期における記録と編纂の職制
―秋田・埼玉両県の場合 |
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第4編 |
郡役所・市町村役場の記録と情報 |
第8章 |
郡役所の記録と情報
―埼玉県・郡制施行以前 1879〜1896 |
第9章 |
市町村役場の記録管理と府県 |
終章 |
アーカイブズ制度への序章−行政記録の<力>と公開 |
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