近世日本石灰史料研究U
 
川勝 守生 著
(元 東京大学大学院博士課程在籍/1972-2006)
川勝 守 解題

2009年5月刊
A5判・526頁・上製本・函入
ISBN978-4-87294-563-8 C3321
8900円
近世関東における石灰産地としては、「八王子石灰」「野州石灰」と、江戸内湾において貝殻を原料に生産された「蛎殻石灰」の三つがあった。
本書には 前書Tに引き続き、木崎義平家(東京都青梅市)に伝わる文書の内、単独文書127部を翻刻し、読み下し文に直し、語句解釈を加えた上に、史料研究を行ったもの。
石灰を必至になって生産し流通させ、江戸に繰り出し、江戸商人と当たり、会所の町人や町名主だけだけではなく、勘定奉行・江戸町奉行とも対決する。その竈主たちの記録。
川勝守生著『近世日本における石灰の生産流通構造』(山川出版社 2007年)の研究の元となった史料で、収録年次は、前書とほぼ同年代の、享保6年(1721)〜慶応3年(1867)であるが、その過半は後半期である。巻末に解題と索引を付す。
前書以降、本書において明らかになった新事実としては、木崎曾兵衛時代の文化文政期における三手会所崩壊後の蛎殻灰竈持の一手会所、これと協調関係を結ぶ木崎曾兵衛、そして関東一円に広がる在方在売り市場の登場などがある。
その頃には、関八州在々に石灰・蛎殻灰産地が出現し、さらには美濃・近江の石灰までが江戸・関東市場に入ってきた。流通末端から消費の場面でも、漆喰壁材としては煉売業者が江戸市中各所の営業圏を設定し、他方、関八州在々に漆喰材以外の染め物、酒直し用等、新需要に支えられた在売りが発達する。
本史料集は、このような、八王子石灰をめぐる人々の姿を彷彿とさせるものである。
(以下続刊)
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