「本書の目的は、中世と近世における文書の作成と管理という特定課題の比較を多国間で試みることである。…
国内では本書のような試みは存在しない。…
本書の編成の意図は以下の通りである。まず、アーカイブズ学の出所概念に基づいて、出所別に文書管理や作成文書を比較検討する部を設けた。それが第1部から第3部である。第1部「統治組織」では、中央政府と地方行政組織が対象である。第2部「村落」では、村のほかに家や宗族も考察の対象となる。第3部「商人と都市」では、普遍的に存在する商人と存在形態の差異が著しい都市を取り上げた。
次に、第4部「訴訟文書と相続文書」は、文書類型論である。最後に、第5部「媒体とリテラシー」は、アーカイブズ研究の前提的領域の一部である。」(本書:渡辺浩一「序」) |
【主要目次】 |
(翻訳者は省略) |
序 |
渡辺 浩一 |
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第1部 統治組織 |
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日本中世の国家機構における文書の作成・保存と廃棄 |
高橋 一樹 |
幕府役職と情報継承―担当交代から記録管理を考える― |
大友 一雄 |
フランスにおける国家アーカイブズ
―中央および地方、12〜18世紀― |
オリヴィエ・ギヨジャナン オリヴィエ・ポンセ |
オスマン国家官僚における文書作成
―時期区分、組織化の展開、文書類の多様化および大量化― |
オゼル・エルゲンチ ヒュルヤ・タシ |
文書と記録、そして「休紙」
―朝鮮時代における文献の伝存様相― |
金 R栄 |
朝鮮時代地方官衙における記録の生産と保存 |
金 R栄 |
日本近世社会の特質と文書の作成・管理 |
高橋 実 |
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第2部 家と村落 |
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日本近世村落における文書の作成と管理・保存 |
高橋 実 |
[コラム] 日本中世村落 |
蔵持 重裕 |
[コラム] 近世フランス農村 |
アントワーヌ・フォラン |
近世における両班家門の文書伝来と構造 |
文 叔子 |
朝鮮後期における村落文書の生産と管理 |
李 海濬 |
村落文書と村落志―徽州歙県西溪南を例として |
王 振忠 |
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第3部 商人と都市 |
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近世日本の商家文書 |
西向 宏介 |
朝鮮時代の商人文書 |
須川 英徳 |
中国における商業関係文書 |
臼井佐知子 |
商人文書、商業関係文書
―中世末期から近世のフランスと西欧― |
ジャック・ボタン |
[コラム] イタリア商人 |
フランチェスコ・グイディ・ブルスコリ |
名前と数
―近世ロンドンにおける情報の収集と共有― |
ヴァネッサ・ハーディング |
日本近世の首都行政における蓄積情報の身分間分有と利用 |
渡辺 浩一 |
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第4部 訴訟文書と相続文書 |
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1840年代在郷における商い金紛争とその特質
―商い帳簿認識と訴訟工作― |
高橋 実 |
明清徽州訴訟文書の分類 |
阿 風 |
清代における徽州のある小農家庭の生活状况
―天字号鬮書に対する考察― |
王 振忠 |
武士への憧れ―「系図」と「家伝記」― |
吉田ゆり子 |
朝鮮後期における村落文書の生産と管理 |
李 海濬 |
村落文書と村落志―徽州歙県西溪南を例として |
王 振忠 |
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第5部 媒体とリテラシー |
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近世イングランドと書かれ印刷される言葉 |
ヴァネッサ・ハーディング |
日本近世都市における法令の伝達
―掲げる・写す・印刷する― |
渡辺 浩一 |
清代蘇州における社会管理
―蘇州の碑刻の分類から― |
唐 力行 |
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比較アーカイブズ学の可能性 |
三浦 徹 |
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