「建久四年曾我事件」と初期鎌倉幕府
曾我物語は何を伝えようとしたか

伊藤 邦彦( いとう くにひこ )
(東京都立産業技術高専名誉教授/1947年生まれ)


2018年7月刊
A5判・744頁・上製本・函入
ISBN978-4-86602-044-0 C3021
16800円 (税別)
評者:坂井孝一(『日本歴史』855  pp94-96  2019.08)評者:坂井孝一(『史学雑誌』128-12  pp70-79  2019.12)
建久4年(1193)5月、曾我十郎・五郎兄弟は、父の敵の工藤祐経を討った。兄弟は、なお頼朝の宿所めがけて突き進んだが、十郎はその場で殺害され、五郎は捕らえられて翌日処刑された。これが、日本三大仇討ちの第一に位置づけられる曾我兄弟の仇討ちである。
事は、それだけにとどまらず、6月に事件は常陸に飛び火し、8月には頼朝の弟源範頼が伊豆に配流。次いで頼朝古参の御家人大庭景義・岡崎義実が出家を強要された。
この一連の過程を、本書では、「建久四年曾我事件」と呼ぶ。
本書はではまず、事件に関する史実を掘り下げ、鎌倉幕府論の成果をもとに、その歴史的意義を闡明にする。そして『曾我物語』成立に関する「定説」を再検討し、「曾我物語は何を伝えようとしたのか」を明らかにし、軍記物語としての同書の特色を捉え直す。
前著『鎌倉幕府守護の基礎的研究』(岩田書院 2010)の著者が、全編、書き下ろしの新稿で問う、歴史学の立場からの『曾我物語』成立論。
【主要目次】

緒 言 本書の課題

第一章 『曾我物語』及び「建久四年曾我事件」に関する諸研究
    (研究の始動/「日本文化」研究/国文学研究/歴史学研究)

第二章 『曾我物語』諸本と物語の展開
    (真名本と仮名本/「曾我語り」/曾我物−物語の展開と受容)

第三章 『曾我物語』概観
    (河津三郎の死と源頼朝/曾我兄弟の辛苦/
    富士野の巻狩と工藤祐経殺害/大磯の虎と兄弟の鎮魂)

第四章 伊東(工藤)氏と伊豆・相模の武士団−事件と物語の基盤
    (曾我兄弟と伊東(工藤)一族/源頼朝の挙兵と北条氏/
    平安末〜鎌倉初期における相模国武士団)

第五章 「建久四年曾我事件」と『吾妻鏡』
    (工藤祐経/敵討への途/「事件」の展開)

第六章 建久期鎌倉幕府の諸問題−『曾我物語』の歴史的深層
    (源頼朝/北条時政/源範頼と土肥実平/三浦氏/常陸の動向)

第七章 「建久四年曾我事件」と『曾我物語』の成立
    (「建久四年曾我事件」の歴史的意義/原曾我物語の成立と
    北条泰時/『妙法寺本曾我物語』の成立)

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