正一位稲荷大明神
―稲荷の神階と狐の官位―


榎本直樹著

(東洋大学短期大学非常勤講師)

1997年10月刊
A5判・246頁・上製本・函入
ISBN4-87294-94-X
4800円
品切れ
2000年3月 2刷出来
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「正一位稲荷大明神」の称号は、伏見稲荷の祭神を、「稲荷勧請」によって、各地の稲荷の社祠に分祀したことを示すものである。そして「正一位」の神階は、伏見稲荷を「狐の本所」とする観念と関わりながら、「狐の官位」として普及していった。
本書は、関東の稲荷勧請の文書をもとに、近世の稲荷信仰の実態を明らかにする。


【主要目次】

第1章  正一位稲荷勧請の文書(文書の種類と発給者/吉田家の宗源宣旨と神号授与状/白川家・伏見稲荷・妻恋稲荷の勧請証書/明治維新以後の勧請証書)

第2章  文書の意味するもの(「正一位」の幣帛・神璽/「正一位稲荷大明神」神璽/勧請の共通性と私的神階/勧請文書の変遷)

第3章  神階から勧請へ(宗源宣旨の「神階」/「神階」の意義/「神階」への批判と規制/『法曹後鑑』に見る私的神階/白川家の同座勧請/神階の消滅と勧請の普及/勧請にかかる費用/宗源宣旨と伏見稲荷の勧請/競合する稲荷と勧請/その他の「神階」/神階の変遷)

第4章  伏見稲荷の神階と勧請(伏見稲荷の稲荷勧請/神階奉授と勧請の根拠/社司と愛染寺との争論/神階奉授説の変遷/『兎園小説』『柳庵随筆』の疑問/明治維新以後の稲荷勧請)

第5章  稲荷勧請の諸相(江戸武家屋敷の稲荷勧請/勧請の方法/勧請の代行と取次/大坂の稲荷勧請/社祠の形態と勧請/重複した勧請/勧請の諸相)

第6章  「正一位」の民俗的展開(狐の「正一位」/「正一位」の威光/伏見稲荷は狐の本所/藤森に集う狐/伏見稲荷と狐の飼育料/兼助稲荷の勧請と稲荷山/兼助稲荷のお位上げ/勧請の仲介者/狐の官位と吉田家・白川家)

補 説  伏見稲荷と「藤森」(伏見稲荷の呼称/藤森稲荷は伏見稲荷/藤森稲荷の由緒と位置/藤森稲荷の分霊/藤森稲荷を称する稲荷/忘れられた呼称)


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