日本のアーカイブズ論
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「日本に記録史料保存利用施設としての文書館などが紹介されてから一世紀以上の歳月が流れ、また、その施設が初めて設置されてから半世紀以上が過ぎ、現在都道府県ではその半数以上の地域で、また市町村においても文書館が徐々に設置されるようになってきている。一方では、記録および記録史料管理の国際的・国内的環境は、急速に技術が進展しており、それに対する理論と技法の構築が必要とされている。 本書は、このような時代的要請のもとに、21世紀のアーカイバル・サイエンス(記録史料学)のあるべき理論と技法を今後切り開くためのひとつのバックボーン、日本における文書館に関する研究の軌跡を、原典で提示することを意図している。 すなわち、1899年から1997年にいたる約100年の間に、文書館そのものや それに関わるさまざまな諸側面が、海外からどのように紹介され、吟味され、また日本の事情に適合した理論と技法がどのように形成されてきているかを、原典にもとづいて明らかにすることを中心の課題とし、歴史的に重要なものや、現在文書館が直面している諸問題に有益な指針を示唆する諸論考などによって構成した。」(本書「編集・刊行の趣旨」より) 編集委員による書下ろしの序章および、各章に解説を付す。 |
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【主要目次】 | ||
序章 日本におけるアーカイバル・サイエンスの形成と課題 | 青山 英幸 | |
〈第1部 文書館像の紹介と史料保存整理論の萌芽 1899年-1980年代前半〉 | ||
第1章 欧米アーカイブズの紹介 | 解説:青山 英幸 | |
古文書館設立の必要 | 無署名 | |
古文書館設立の必要 | 黒板 勝美 | |
読書生として見たる欧米の公文書館及び図書館 | 藤井 甚太郎 | |
文書館 | 鈴木 賢祐 | |
イギリスの古文書保存制度と吾が国の公文書館問題 | 城戸 毅 | |
第2章 保存整理論の萌芽 | 解説:高橋 実 | |
東寺百合文書の補修について | 橋本 初子 | |
近世史料の分類について | 高橋 実 | |
古典籍保存庫の施設考案について ―阪本竜門文庫の書庫を中心として― |
川瀬 一馬 | |
空調式古文書保存書庫の15年 | 田中 康雄 | |
経営史料としての個人文書 ―石川一郎文書の整理に即して― |
武田 晴人 | |
〈第2部 日本におけるアーカイバル・サイエンスの形成 1980年代後半-1997年〉 | ||
第3章 日本のアーカイブズ論の形成 | 解説:安藤 正人 | |
記録史料―人類の遺産を守るために― | 安澤 秀一 | |
文書館運動と史料保存運動のインターフェイス | 北川 健 | |
地方自治体の記録をどう残すか─ ―文書館へのステップ― |
戸島 昭 | |
訴訟記録保存法制の現状と問題点 | 竹澤 哲夫 | |
史料保存実現のための提言 ―利用・公開を軸とした文書館事業展開の可能性― |
辻川 敦 | |
史料と記録史料学 | 大藤 修 | |
記録史料学と史料論について─ | 保坂 裕興 | |
第4章 記録史料の管理論 | 解説:鈴江 英一 | |
地域史料の保存と文書館 ―新潟県立文書館、史料所在調査の試み― |
山本 幸俊 | |
行政文書の整理と編成 ―史料整理基本原則の適用とその問題点― |
竹林 忠男 | |
文書館における近世文書の目録作成をめぐって ―コンピュータ化環境の中での問題点― |
田中 康雄 | |
アーキビストの専門性―普及活動の視点から | 森本 祥子 | |
初期整理段階の史料保存手当 | 廣瀬 睦 | |
第5章 記録史料の形成・伝来論 | 解説:保坂 裕興 | |
村方騒動と文書の作成・管理システム ―武蔵国秩父郡上名栗村を事例として― |
保坂 裕興 | |
萩藩当職所における文書の保存と管理 | 山崎 一郎 | |
商家文書における経営帳簿組織の復元と目録編成 ―備後尾道橋本家文書を事例として― |
西向 宏介 | |