No.971(2016.10)

【若手研究者の経済的な困窮】

 今年の歴史学研究会の大会で、以下のようなアンケート結果のチラシが配布された。タイトルは、「「若手研究者問題」解決に向けた歴史学関係者の研究・生活・ジェンダーに関するウェブ・アンケート調査結果【速報】」(日本歴史学協会若手研究者問題検討委員会)。
 B5両面印刷。このアンケートの集計・分析については、2016年度中に報告書を作成予定とあって、今後の活動については、ウェブサイト https://sites.google.com/site/jhcwebsurvey/でお知らせする、と書いてあるが、そこを見ても、2016.9.12現在何も公開されていないので、現状での検討材料は、このチラシだけになる。
 有効回答数517。「若手問題」と言っても、対象は「全ての世代の歴史学関係者」で、年齢構成は20代(15%)、30代(36)、40代(26)、50代(16)、60以上(7)。研究領域は、日本史(49%)、アジア(18)、ヨーロッパ(27)。現在の立場は、大学教員(52%)、非常勤講師・研究機関研究員・専門職(23)、大学院生(17)、中学高校教員(3)、その他(5)。
 さてその収入。20代本人、100万円未満(20%)、200未満(44)、400未満(31)、600未満(4)、600以上(1)。30代本人、100万円未満(9%)、200未満(18)、400未満(24)、600未満(26)、800未満(17)、800以上(6)。
 これを受けて、研究活動の「困難さ」で、我々出版社に直接関係する「資料を購入・入手する経済的余裕がない」という質問に対する答え。とても感じる(19%)、ある程度感じる(23%)、どちらとも言えない(12)、あまり感じない(32)、全く感じない(14)。
 おいちょっと待て。私は、本が売れないのは「研究者は、本を買うお金がないから、買いたくても買えない」と思ってたぞ。でもこの結果は、お金がないからという人は約半分、あとの半分は金はあるよ、と言ってるぞ。もちろん、これに答えてる人の半数は40歳以上だし、4分の3近くは研究職についている。だから、これらの人は、本を買う経済的な余裕はある、と言ってるのだと思う。あるけど買わないんだ…。あれ、違うのか?、この人たちは、買ってくれてるのか。その人数が少ないだけなのか?。