No.749(2012.06)

【ようやく完結】

 『都市民俗基本論文集』(全4巻+別冊2)がようやく完結した。今回の最終回配本(別冊2)の「あとがき」に編者の一人の倉石先生が書いているが、第1回配本2009年から足かけ3年かけての完結。なお この本、最初の初校が出たのが2005年。「構想○年、堂々完結」という惹起を見ることがあるが、これって自慢にならない。
 既発表論文の再録なのと、正直言って、あまり売れそうにないのとで、経費と手間と時間をかけたくなかった。で、新組しないで、そのまま各論文を複製して刊行することも考えた。
 ただその場合、問題はいくつかあった。元の論文が発表された媒体の大きさがまちまちなこと(B5,A5,B6)。縦組み・横組みがあって、テーマにそって配列すると、前から始まるものと後ろから始まるものが、混在することになること。写真版による複製だと、印刷の状態が悪くなること。
 利点としては、発表された雰囲気が判ること、新組する際の誤植が避けられること、経費が安くあがること。現に、そういうシリーズも何種類か出版されている。
 結果として、複製案は編者から却下。
 書名の問題もあった。既発表論文を集めた本であることを示す書名が、共通の認識になっていないことである。「講座」は書き下ろしシリーズであるというのは判るが、「論集」「叢書」「集成」などは、どちらでもあり得る。欧文だと「リーディングス」という言葉があって、これを使うと、既発表論文集であることが判るし、現にそういうシリーズが何種類も出版されている。で「リーディングス都市民俗論」のような案を出したのだが、これも賛同を得られなかった。
 そうこうしているうちに、岩田書院の編集体制の問題で、なかなか作業が進まず、時間がたってしまった。こういう企画は、やろうと思った時に一気に出さないとだめ。思ったときが売り時です。こういう本が欲しい、と思うから作ろうとするわけだから。学問にも流行り廃りがあるので、このシリーズ、正直言って、時期を逸した。でも、なんとか完結です。