著者名:井之口章次著『歩く・見る・書く−民俗研究六十年−』
評 者:飯倉義之
掲載誌:「口承文芸研究」30(2007.3)


 本書は民俗学者・井之口章次氏(一九二四〜)の自伝である。氏の略歴を整理しよう。
 國學院大學で折口信夫に学び、折口の郷土会、柳田國男の木曜会に出席。第一回日本民俗学会年会で発表。財団法人民俗学研究所所員として『民俗学辞典』編纂に参与。複数の大学で民俗学の講座を担当し、のち杏林大学教授。國學院大學では学生研究会「國學院大學民俗学研究会」を設立、長年にわたり指導した。現在も続く同会の年次報告「民俗採訪」は、良質の資料集として評価が高い。著書『民俗学の方法』は、民俗学・民俗調査の入門書として現在も読み継がれている。
 まさしく氏の歩みは戦後日本の民俗学の歩みそのものである。本書は日本民俗学を生き、民俗採訪を生き、学生研究会を生きた碩学の証言として、かけがえのない光を放っている。
 氏は脳梗塞を患われて以来不自由があり、本書は令夫人由里子氏が日記や未発表稿よりまとめられた。ご夫妻の共同作業に感謝し、活かす。我々後続にはその義務があるだろう。


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