著者名: 藤井一二編『近世の地域支配と文化』
評 者:森 朋久
掲載誌:「地方史研究」323(2006.10)

 本書は、当初『日本海地域史研究』一五輯として、文献出版から発刊すべく準備を勧めていたところ、同社社長栗田治美氏の死去のため、同氏と懇意である岩田書院岩田博氏の計らいで二分冊で刊行された論集のうちの一冊である。
 本書の構成は、以下の通りである。
 
 戦国末期の地域防衛−越中・越後の事例検討−             竹間芳明
 近世初期尾張の地域支配について−慶長十三年を中心に−        和泉清司
 近世前期出羽幕領御城米の払方について                本間勝喜
 近世後期蝦夷地経営の人材的・機構的連続性について          佐藤 匠
 近世加賀町人の暮らしと文化−小松・安宅を中心として−        池田仁子
 あとがき                              藤井一二

 竹間論文は、越中・越後を事例に境目付近や戦略上の拠点において地域防衛の一端を担った地元住民の動向と領主の対応を検討している。
 和泉論文は、慶長十三年を中心に尾張藩の年貢割付状、幕府直轄領・寺社領などの点から尾張の地域支配について検討している。
 本間論文は、延沢銀山への廻送を中心に江戸廻米開始以前における年貢米の払方と、江戸廻米開始当初の江戸町人による商人廻しについて、それぞれ検討している。
 佐藤論文は、近世後期第一次・第二次幕領期の蝦夷地政策の人材的・機構的な連続性について、明治初年までを視野に入れ検討している。
 池田論文は、小松・安宅を中心に、「小松旧記」「安宅町文書」を利用しながら、近世加賀地方の町人の暮らしと文化について検討している。
 あとがきでは、地方史研究および地域史研究の出版に尽くされた栗田氏の熱意が伺われ胸を打つものがある。
 
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