大石学監修 太田尚宏・佐藤宏之編集『東海道四日市宿本陣の基礎的研究』
評者・和田勉 掲載誌・地方史研究296(2002.4)


 はじめに
 東海道宿駅制度が制定されてから、二○○一年は、四○○年を迎えこの期に各地での宿駅について、研究も盛んになっている。
 本書は、東海道の四日市宿の清水本陣家の本格的史料をもとに調査と研究をまとめ発刊したものである。これは、『四日市市史』の編集に伴う調査でもあったが、その史料の膨大さと重要性からみて、広く研究者に役立つのではないかとして、独立した文献としての発刊になった。
 清水本陣家の文書は、慶長六年の宿駅制度成立以前から明治に至るまでの文書が保存され、本家の史料を通し、東梅道の宿駅制度や近世の交通史をはじめ、歴史の中で人びとの動きを宿泊帳から見ることが出来て、新しい史料をも提供でき得るものである。
(目次省略)
 本書では、第一部は、本陣文書の分類・整理に新しい手法に依ったので、今後の古文書整理のサンプルに成りうるものであろう。第二部では、この本陣文書の分析に基づいた新たな事実を赤穂事件などの研究例を紹介している。第三部では、膨大な本陣史料のデータ化である。四日市宿本陣の休泊を正保四年(一六四六)から明治二年(一八六九)までの宿泊帳類を、宿泊者、藩名、石高、役職、滞在日日数、休泊・滞在の形態、通行目的、拝領物、進上品などを一覧表にしたものである。
 本書と同様のデータが各地の宿場・本陣で全国規模で蓄積、ネットワーク化されるならば、歴史研究に大いに役立つのではと思われる。その先駆的な試みとして紹介したい。

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