北秋田市・綴子(つづれこ)神社の「内館(うちだて)文庫」所蔵資料をもとに、修験者・般若院 英泉(えいせん)(1714-82)の思想と行動を明らかにし、近世中期の修験道の実態を示す。
内館文庫とは、綴子神社宮司の武内家に伝来する書籍・文書・記録類(2600点)およびそれらを所蔵する施設をさしている。その名称のもととなった「内館塾」は、社伝によれば慶安年間に創設、享保15年に藩の公許を得たとされる。この時期に英泉の活動時期も重なる。
英泉は、13歳で得度を受けた修験者であるが、修験の枠におさまらず、神道・儒教・仏教を渉猟し、また地理的にも、秋田・山形、遠くは江戸・大坂・伊勢・九州にも足跡を残す「越境する宗教者」であった。
本書では、英泉の思想と行動を、内館文庫に残された資料から読み解き、秋田を中心とした近世修験の世界を描き、併せて文庫の分類目録を収録して、今後の研究の基盤を作る。 |