橘孝三郎の農本主義と超国家主義
もう一つの近代

菅谷 務 著
(五浦美術文化研究所客員所員/1950年生まれ)

2013年11月刊
A5判・224頁・並製本・カバー装
ISBN978-4-87294-833-2 C3021
3000円 (税別)
評者:三石善吉(『歴史文化研究(茨城)』1  2014.07)評者:昆野伸幸(『日本歴史』802  pp112-114  2015.03)
「橘孝三郎の「納本主義」思想は、前著『近代日本における転換期の思想』(2007 岩田書院)でも述べたように、これまで、北一輝や大川周明らの思想とともに「日本ファシズム」を代表する思想として位置づけられてきた。〔橘の思想は〕「日本ファシズム原始回帰論派」として分類されている。
 こうした分類の仕方には、啓発されるところが多々あるが、本書における基本的な視点は、これと違って、1930年代に時代をリードした政治思想を、一様に「日本ファシズム」として括るのではなく、多様に展開していく契機を内包した体制変革の思想として捉えることにある。(中略)
 本書の副題を〈もう一つの近代〉としたのは、橘の「農本主義」思想が、前近代的な思想ではなく、「近代思想」そのものであるという理由からである。(中略)
 前著が「農本主義」と「超国家主義」の成立を橘の「実存」という面から内在的に理解することにスポットを当てたのに対し、本書は、橘が時代の制約の中にありながら、本当に訴えたかったものは何か、そして、私たちは、そこからどのような歴史の教訓を引き出せるのか、ということいついて、より未来志向な観点から考察を加えた。(中略)
 それは、前述したような橘の戦争批判、天皇論とキリスト教神学との関係、「農本主義」とエコロジー思想との比較などであり、管見のかぎりでは、これらのことは今までに論じられたことがなく、テーマとして本格的に取り上げたのは本書が初めてであるといってよい。」(「序」より)
【主要目次】

第1章 「超国家主義」への軌跡
     −「国家」と「共同体」−
第2章 橘孝三郎の「農本主義」と〈共生〉の思想
     −〈もう一つの近代〉への模索−
第3章 「日本ファシズム」と超国家主義思想の位相
     −橘孝三郎と北一輝の「労働観」を中心として−
第4章 橘孝三郎にみる「現人神」と「イエス・キリスト」

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