西浦田楽の民俗文化論

吉川 祐子 著
(富士常葉大学非常勤講師/1952年生まれ)

2012年3月刊
A5判・270頁・上製本・カバー装
ISBN978-4-87294-753-3 C3039
4800円 (税別)
評者:中村羊一郎氏(『日本民俗学』273  2013.2)評者:久保田裕道氏(『民俗芸能研究』53  2012.9)
静岡県浜松市水窪町の「西浦(にしうれ)田楽」は、新野の雪祭り、奥三河の花祭りをはじめとした湯立神楽とならぶ、三信遠の、いや日本の第一級の民俗芸能であり、折口信夫や早川孝太郎をはじめとする多くの研究者を魅了し、昭和51年には、国の重要無形文化財の第1回の指定をうけている。本書は、別当家・能衆家を中心に世襲で伝えられてきた西浦田楽を調査研究してきた著者が、歴史を概観し、祭りを記録し、その伝承の意味を探る一書である。なかでも能衆家の役割分担の分析は、本書が力を入れている部分であり、また、早川調査時との比較を試み、すでに消滅した祭りの行事の部分にも言及し、古い西浦田楽の姿をさぐる。また、近隣の祭りとの比較を通して、遠州のおこないの古い形が「採火祭り」であることを指摘し、西浦田楽が遠州の再奥の孤立した祭りでない事にまでおよぶ。
【主要目次】

第1章 西浦田楽の歴史
      西浦の歴史/
      人別帳を読み解く/
      西浦の世襲制

第2章 西浦田楽の記録
      西浦田楽の概要/
      伝承者と支える村人/
      能衆の祭り
       (祭りの準備/祭りの始まり/
        奥院鎮守の祭り/観音様の祭り)

第3章 西浦田楽の民俗誌
      英郷別当の伝承/
      能衆喜平地の伝承/
      西浦田楽を伝える

第4章 西浦田楽の伝承論
      西浦のクモンシュウ/
      採火の祭り/
      がくとう定めは閏年神事/
      消えた鎮守祭り/
      招く神・招かざる神

付 録 西浦田楽の資料
      聖観世音祭人別控覚帳(昭和52年)/
      地能(詞章)/
      聖観世音菩薩由緒記録(昭和53年)/
      観世音祭多遊人別帳2種(元文2年)

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