本書は、大学共同利用機関法人人間文化研究機構における機構連携研究「ユーラシアと日本:交流と表象」(2005〜09年度)における「唱導文化の比較研究」班の成果論集である。
本書では、日本における唱導文学研究をさらに広く拡張し、絵画とそれをめぐる文芸的な営みを扱う絵解き研究の蓄積を活かしてユーラシアにおける唱導の文化の諸相を扱っている。唱導という仏教の布教行為を指すものとして用いられてきた概念を、ここでは、日本列島におけるさまざまな宗教の唱導と、ユーラシア大陸におけるキリスト教や仏教の唱導の様相に光を当てるための研究上の概念として用いた。特に説話や絵画、儀礼や芸能を唱導文化という観点で考察する試みとしては類書のないものと考えている。 |
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【主要目次】 |
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唱導と芸能−唱導文化の視点小攷− |
林 雅彦 |
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日本における唱導文化の展開 |
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慶滋保胤「「然上人入唐時為母修善願文」考 |
吉原 浩人 |
矢田寺の「欲参り」信仰の成立とその唱導
−逆修信仰との関係および「矢田地蔵毎月日記絵」をめぐって− |
渡 浩一 |
地獄を語り、地獄を唄う
−女性に関する唱導を中心として− |
高達奈緒美 |
青森県における仏教唱導と女性
−地獄絵の開帳をめぐって− |
山田 厳子 |
奥会津の修験龍蔵院における修験道聖教典籍の多様性 |
久野 俊彦 |
龍王たちの行方−陰陽道「神話」の唱導性− |
小池 淳一 |
熊野詣で−熊野の神・仏と祈りの世界− |
林 雅彦 |
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ユーラシアにおける唱導文化 |
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キリスト教絵解きの伝播
−東アジア地域を中心として− |
原 聖 |
フランスのキリスト教入門教育における絵解き説教
−宣教師向け絵解き図像がいかに作られたか− |
イザベル・サン
=マルタン |
古代仏教の祭儀と芸能、その伝承
−日本と韓国− |
松尾 恒一 |
敦煌唱導資料研究序説 |
荒見 泰史 |
台南道教の奈河橋全論
−道教の功徳戯にみる唱導文化− |
丸山 宏 |
台湾の義賊伝承と唱導−廖添丁と李師科− |
伊藤 龍平 |
海賊から英雄に至るまで
−伝説における鄭成功の再探索− |
蔡 對@ |
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