八王子千人同心における身分越境
百姓から御家人へ
近世史研究叢書45

吉岡 孝著
(國學院大學准教授/1962年生まれ)


2017年3月刊
A5判・344頁・上製本・函入
ISBN978-4-86602-987-0 C3321
7200円 (税別)
評者:藤田覚(『日本歴史』840  pp111-113  2018.05)
「本稿の視角を提示しておきたい。筆者は千人同心に関する検討を行ない、千人同心は基本的には百姓身分であるとした。しかしそれは実態レベルの検討である。寛政四・七年に行なわれた改革以降、千人同心を御家人(下級武士)とする言説は存在する。…これをどう考えるかが問題になる。」(本書「序章」より)
本書では、千人同心が百姓身分を越える具体的経過とその背景を考察し、その身分越境の状況がもたらした千人組の組織の変容と村や領主支配との矛盾、およびそれがもたらす社会統合の破綻を論じる。
【主要目次】

序 章 身分と八王子千人同心の研究動向
   (「基礎構造基礎づけ主義パラダイム」の展開/
   身分的周縁パラダイム/新しいパラダイムを求めて)

第1部 八王子千人同心における身分集団の生成と構造

第1章 八王子千人同心における寛政改革の意義
   (千人同心身分の祖型/寛政改革の前提条件/寛政改革の実態)

第2章 御家人言説の遂行過程
   (御家人言説の遂行とその影響/
   八王子千人同心五十人御咎一件/横山宿狼藉一件)

第3章 八王子千人同心の役職と格式
   (見習・世話役・昇進組頭/旧家組頭/譜代)

第4章 八王子千人同心株売買の実態
   (八王子千人同心株売買の基礎的条件/
   養子相続から養子番代へ/由緒番代の変容)

第2部 身分越境による組織と社会の変容

第5章 八王子千人組における月番所の成立とその意義
   (「七隊六箇条」一件と平同心寄合/月番所の成立と活動/
   月番所の自立的活動/月番所の実態)

第6章 八王子千人組における番組合の成立とその意義
   (寛政改革期における番組合の設置/番組合議定書の分析)

第7章 千人同心と家・村
   (千人同心と家/千人同心と村/千人同心と地域社会の矛盾)

第8章 幕末期における社会統合の破綻
   (小川三太郎の千人同心肩書をめぐって/長屋門一件をめぐって/
   社会統合の破綻)

結 論

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