呪縛・護法・阿尾奢法
説話にみる僧の験力
日本宗教民俗学叢書9

小田 悦代 著
(佛教大学大学院博士課程満期退学/1964年生まれ)

2016年10月刊
A5判・282頁・上製本・函入
ISBN978-4-86602-973-3 C3339
6000円 (税別)
評者:酒向伸行(『久里』35・36  pp90-93  2016.03 神戸女子民俗学会)評者:舩田淳一(『宗教民俗研究』27  pp159-167  2018.01)

漢訳密教経典の病気治療呪法には、日本の説話記述と非常に似通ったものがあり、その予言の阿尾奢法には、日本の護法童子と共通する使者を用いるものが多い。
そのため、本書では、説話には断片的にしか描かれない呪術の内容を理解するのに、漢訳密教経典を参照する方法をとった。密教僧・修行者が、強盗などの悪人や、病気原因の悪しき霊的存在を「縛」する場合は「護法」が関与している。
また「阿尾奢法」は、鎌倉時代初期にはヨリマシを用いる病気治療加持として捉えられ、「縛」と「護法」と「阿尾奢法」は、全てが関連する。

【主要目次】
序章 目的/使用する用語の概念・表記/僧の験力を示す説話の基本形態/構成と概要
第一章 北野天神縁起霊験譚における仏教説話的要素
(仁俊潔白の問題点/敷島盗衣と仁俊潔白の相違/十訓抄における仁俊潔白の同話/日本霊異記にみる悪しき報い/密教僧の祈りと呪術的効果/仁俊潔白説話成立背景の推測)
第二章 神を「縛」する話
―病気治療における仁和寺性信と住吉大明神―
(後拾遺往生伝の家宗妻の話の概要/説話世界における神と僧の力関係/御室相承記・真言伝の家宗妻の話―「呪」の具体的記述、「法楽」の記述)
第三章 「解縛」と「辟除」 ―異常な状態を終結させる呪術―
(説話類にみる「辟除」/漢訳密教経典における「辟除」の諸相/漢訳密教経典における「辟除」と「発遣」/「追う」という行為の重要視)
第四章 阿尾奢法の日本的受容
―予言の法から病気治療呪法へ―
(漢訳密教経典にみられる阿尾奢法/作法集の験者作法の記述における注目点/ヨリマシを用いない加持と漢訳密教経典の病気治療呪法/漢訳密教経典における予言の法と病気治療呪法の混在/予言の法が含む病気治療法への移行を可能にする要素)
第五章 阿尾奢法と使者童子
(使者を用いる法としての阿尾奢法/不動明王経典にみる使者童子/観音経典に見る使者童子)
 付論 十羅刹女信仰の変容
―説話中における童子との関係を中心に―
(法華験記/今昔物語集/宇治拾遺物語・古今著聞集/現実社会/童子信仰と十羅刹女信仰)
第六章 相応伝に記された阿尾奢法 ―その背景と「縛」の概念―
(相応伝の阿尾奢法の解釈/「呪縛」の概念と「縛」の用例/相応伝と恵果伝の相違から考えられる点)
終 章 夢見 ―予言の阿尾奢法にかわるもの―

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