寛政期の感情・倹約・制度
−勘定奉行中川忠英言行録『令聞余響』の世界−

吉岡(よしおか) (たかし)(國學院大學教授)
岩橋(いわはし)清美(きよみ)(國學院大學教授) 編


2025年2月刊
A5判・416頁・上製本・カバー装
ISBN978-4-86602-176-8 C3021
8900円 (税別)

本書の目的は「倹約」を中心に以下の三点である。一点目は倹約を感情として捉えること、二点目は倹約を制度として捉えるということで、三点目は、以上述べたことを、18世紀末期の江戸時代に具体的位置づけることである。それは別な言葉を使用すれば寛政改革期とはどういう時代かを問うことでもある。
第一部「寛政期の感情・倹約・制度」では、寛政改革の一般的な特質について言及する。
第二部「『令聞余響』の世界」は、当該時期に目付・長崎奉行・勘定奉行(関東郡代兼帯)を歴任した旗本中川忠英のさまざまな動向を明らかにする。
第三部「翻刻『令聞余響』」は、第二部の論考の基本史料になった『令聞余響』の翻刻である。

中川忠英(なかがわ ただてる、宝暦3年−文政13年(1753−1830))は、当該期に、目付・長崎奉行・勘定奉行を歴任し、寛政改革に深く関わった旗本である。
『令聞余響(れいぶんよきょう)』は忠英の言行録で、跋文に「文政十三季九月 藤方安清謹誌」とある。根岸茂夫氏(國學院大學名誉教授)が古書肆より買い求めたもので、他に所蔵を確認できない。

【主要目次】 
問題提起 岩橋清美・吉岡孝
第一部 寛政期の感情・倹約・制度
寛政改革期における大衆消費社会の展開と行政空間の発見 吉岡  孝
近世後期の地誌にみる地域認識の特質
 ―勘定奉行中川忠英の民撰地誌支援をめぐる動向を中心にして―
岩橋 清美
寛政期の幕領支配と「奇特人」「差配人」
 ―勘定組頭小出大助支配所を中心に―
榎本  博
 
第二部 『令聞余響』の世界
    シンポ「感情・倹約・制度の江戸時代」2023.9.の記録を改稿
『令聞余響』にみる中川忠英の交際 井上  翼
中川忠英の文芸活動とその役割について 村上 瑞木
武家社会に対する中川忠英の問題意識と中川家親類 松本日菜子
中川忠英編纂の医療関連書について 西留いずみ
寛政期北関東農村の間引き抑制にみる「仁政」理念の変容
 兼帯関東郡代中川忠英の「治民」によせて
布川 寛大
 
第三部 翻刻『令聞余響』
 本 文  
 解 題 村上 瑞木
結びにかえて ―本書成立の経緯 吉岡  孝
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