伊勢信仰を広く民衆にまで普及させる上で大きな役割を果たしたのが、神宮御師(おんし)である。 その本格的な研究として特筆されるのは、近世後期の国学者・足代弘訓が天保4年に著した「御師考証」である。これが、良くも悪しくも、そのごの研究の方向性を規定した。 本書はその克服を目指し、 ・神宮御師が構成する集団(神宮御師集団)に着目し、その実態を明らかにする、 ・神宮御師と江戸幕府・伊勢神宮との関係を浮き彫りにする、 ・神宮御師の身分的な様相を明確にし、これが確定してゆく過程を跡づける、 これらにより、神宮御師という存在を近世社会上で位置づける。
序 章
第一部 神宮御師の近世的変化 第一章 神宮御師集団と師旦関係 −寛永年間の争論をめぐって− 第二章 山田三方と旦那争論 −裁判制度の整備を中心に− 第三章 神宮御師の連帯意識の萌芽 −「内宮六坊出入」を素材に−
第二部 神宮御師と近世社会 第四章 伊勢神宮外宮宮域支配と山田三方 −「宮内之定」をめぐって− 第五章 山伏から御師への転身 −内宮御師風宮兵庫大夫家を例に− 第六章 衣類統制と伊勢神宮 −天和年間の「帯刀一件」を素材に− 補論一 近世前期の山田三方と外宮宮域支配 −承応二年の「横目」設置を素材として−
第三部 神宮御師をめぐる諸問題 第七章 「文禄三年師職帳」について 第八章 中世末期から近世初頭にかけての内宮御師の活動 −寄進状の表記を素材として− 第九章 近世における由緒改編の一事例 −風宮兵庫大夫家を素材として− 補論二 御祓の授与と伊勢神宮 −安政二年の外宮による「白石屋」への制禁を素材に−
終 章