国民学校六年生
田原茂生の日記


梅林武雄編
室田卓雄解説

2005年1月刊
B6判・188頁・並製本・カバー装
IISBN4-87294-359-7
1143円
すいせんの言葉・・・・・・・関西大学名誉教授 小山仁示
 130年余りの小学校の歴史の中で、昭和16年から22年までの6年間だけは国民学校と称された。国防教育の充実が図られたのである。
 本書は昭和16年、国民学校6年生の少年の日記である。少年は東京の尋常小学校から大阪郊外の国民学校初等科に転校してきた。成績の良い少年は、先生に励まされて、熱心に勉強した。その一方で、近くの川で魚をとったり、トンボの標本作りに熱中した。
 12月8日、日本は米英両国に宣戦し、太平洋戦争が始まった。この年の8月ごろから日記の軍国調が強まっていたが、開戦とともに学校行事の戦時色も濃くなる。しかし、本人にとっても、両親にとっても、先生にとっても、上級学校への進学こそが大問題であったようだ。進学率の低い時代であったが、中等学校進学希望者の間では熾烈な競争だったのである。
皇国少年が見た昭和史―天皇制国家を素直に描く―・・・・・・・室田卓雄
 本書の著者である田原茂生さんは、呉服小学校の3期生である。昭和16年4月に東京の小学校から父親の転勤にともない大阪にやってきて、呉服小学校(現在の大阪府池田市立呉服小学校)に転入した。この年、明治以来使われていた「小学校」の名前が消え、全国の尋常小学校は「国民学校」となった。また同年12月8日は、日米開戦の日として忘れてはならない年である。
 田原さんは、転入した6年生の時、担任の梅林武雄先生から全員日記を書くように言われ、一年間休まず日記を書き綴った。日記を読むと、日々の学校生活の中から、刻々と戦時色が強まっていく様子が伝わってくる。戦争を知らない世代にとって60数年前の教育を知る貴重な証言である。(池田市立呉服小学校長)
本書は、『茂生の日記―戦時下小学六年生の日常』(梅林武雄編集・発行、1998年刊)を書名を変更し、新字・新仮名遣いに変えて、新版として刊行するものです。
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