中世の癩者と差別

金井 清光著
(鳥取大学名誉教授/1922年生まれ)

2003年4月刊 
四六判・96頁・並製本
ISBN4-87294-282-5
1000円
品切れ

2005年4月3刷出来

「私は、長年にわたり一遍と時衆教団を研究しているが、一遍の生涯と宗教を描いた絵巻『一遍聖絵』に多くの乞食・癩者が被差別者として描かれている。一遍の宗教と乞食・癩者とはどのような関係にあるのかを究明することは、一遍と時衆教団研究の重い課題の一つである。…いま私は『聖絵』を一つの手がかりとして、鎌倉時代の乞食・障害者に対する差別を癩者を中心に検討しようとしているが、そのさい現代の基本的人権の概念を前提としてはなるまい。…現代を基準にして中世を論断したのでは、中世の真実を明らかにすることができない。…中世社会には現代と異なる独自の思想・慣習・規範があった。…ある言動が「差別」にあたるか否かは、その痛みを知っている被差別者にしか分からないのが真相である。そして中世の被差別者の告白文は現代に伝わっていない。よって現代のわれわれ研究者としては、現代に伝わる中世文献等の資料を検討し、中世の障害者・乞食にとって不利益なことはすべて中世社会における差別と認識するのが妥当である。」(本書より)
【主要目次】
1 古代・中世の癩病と差別
差別とは/仏教と差別/癩は業病/ハンセン病の症状/癩と「かたゐ」/『頓医抄』と癩病
2 中世癩者の実態
『一遍聖絵』に見る癩者/時衆教団と癩者/非人・長吏/非人の宿/宿と長吏/家を出る癩者
3 中世癩者の服装
河田光夫氏の装い差別論/白布で顔をかくす/柿の衣/癩者差別の象徴
ご注文へ