「鬼子」論 序説
その民俗文化史的考察

近藤 直也著
(九州工業大学教授/1954年生まれ)

2002年4月刊
A5判・236頁・上製本・カバー装
ISBN4-87294-214-0
3200円品切れ

2010年1月*3刷出来

 この人は、十月廿月過ぎ、三年にてぞ生まれける。姿を見れば、世に越えて恐ろしく、常の三歳ばかりにてぞありける。(『弁慶物語』より)

 「鬼子」と言えば、「歯」が生えたまま生まれた子供、というイメージがかなり根強く存在 し、そしてその「鬼子」の中でも、生まれながらに「鬼子」の条件を満たしていた者の多くは、殆どの場合、殺されていたのである。

 ところが、殺害しようとしたにもかかわらず死なずに生き残った者達がいた。これが伊吹童子や酒呑童子・茨木童子などの「鬼子」童子であり、若一殿・鬼若・鬼若丸などと呼ばれた「鬼子」弁慶であった。彼らは、公然と「公」の秩序に背き、野獣達に食い殺される事を目的として山奥に捨てられても死なず、逆に野獣達を友として逞しく育つのである。これら「鬼子」のルーツが『熊野の本地』や『旃陀越国王経』に認められることを明らかにした。

 本書は、近藤著『「鬼子」と誕生餅―初誕生儀礼の基礎的研究』(2002年 岩田書院)の総論にもあたる。
【主要目次】
第1章  「鬼子」の民俗
「鬼子」の今を問い、伝承の中で「鬼子」がどのように語られて来たか、人々の記憶の 中にある「鬼子」の姿を浮き彫りにする。
第2章  「鬼子」の文化史
古代から明治に至るまで、文献史料の中に見える「鬼子」像を一つ一つ吟味し、歴史的 に変遷してきた部分と、古代以来殆ど変わらなかった部分を明らかにする。
第3章 初誕生儀礼における「鬼子」
一歳未満で歩く子供を「鬼子」と呼ぶ類例/「王子」から「鬼子」へ
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