柳田国男研究年報3
柳田国男・民俗の記述


柳田国男研究会 編

2000年10月刊
菊判・348頁・上製本・カバー装
ISBN4-87294-184-5
5900円


柳田國男がこの世を去って、早くも30有余年の歳月が経過した。
周知の通り「柳田民俗学」などという名辞をもって呼ばれて来たほど、研究分野は多岐にわたっているが、研究が細分化すると、ややもすると全体を見失うという弊害が生じる。
そこで本書は、柳田自身の語った言葉や、家族・親族が書き残した文章によって、等身大の柳田を理解できるよう努めた。なお 柳田の著作については、「定本柳田國男集」に未収のもの、現在編集中の新全集に収録予定のないものを含む。また付編は、家族・親族の文章で構成するが、定本月報をはじめ、現在入手困難な既発表の文章を再録する。


【主要目次】

[特集] 民俗の記述:柳田国男と宮本常一
『土佐源氏』の成立─────────────────── 井出 幸男
何年前になるのか、私は『土佐乞食のいろざんげ』という著作を偶然目にした。その折、直感的に『土佐源氏』の原作本ではないかと思い、その真相を究明する必要性を感じていた…。一方は庶民の「生活誌」として高い評価を受け、もう一方は「地下秘密出版物」としてほとんど日の当たらない世界に置き去りにされている。もし同一作者の著作であるとしたら、その落差は見過ごすことができない程に大きい。(井出)

寄合民主主義に疑義あり―宮本常一「対馬にて」をめぐって―───杉本 仁
宮本が眼にし感じた伊奈(対馬)のヨリエーは、宮本が描いた<寄合民主主義>であったのだろうか。そんな疑惑を拭い去ることができない。この宮本説を踏襲するにしても、なおいくつかの疑義をのり越えなければなるまい。(杉本)

物語作者の肖像―柳田国男への一視点―──────────永池 健二
柳田国男を一人の物語作者として規定してみる。そこから何が見えてくるか。…柳田にとって「物語作者」であることは、生来の資質そのもののごとく、本質的なものであったと思う。『遠野物語』の作者だというだけでなく、そうした資質は彼の仕事のあらゆる部面にわたって眼に見えない伏流となってその基層に流れている。(永池)

「採訪採集」―柳田国男と郷土誌編纂事業―──────── 伊藤 純郎
孤島苦の政治学―南島研究の射程―─────────── 田中 藤司

[伝記研究]
柳田国男の洋書体験1900〜1930―柳田国男所蔵洋書調査報告―高橋 治
       

[資料紹介]
『土佐乞食のいろざんげ』──────────────── 井出 幸男
下元サカエ媼聞書────────────────  杉本 仁・井出幸男・永池健二
柳田国男自筆原稿「山バトと家バト」 ───────── 小田 富英


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