昔話の現象学
―語り手と聞き手のつくる昔話世界―


武田 正著
(山形女子短期大学教授)


1993年8月刊
A5判・上製本・函入・392頁
ISBN4-87294-04-4
7900円 (税別)
前著『日本昔話の伝承構造』が、昔話が語られる場“語りの座”に注目したのに対して、本書では、語り手と聞き手との間にある緊張関係の解明に焦点をあてようとした。
本論の全体構想は語りを中核として、昔話を語り、昔話を聞くという行為の中で、聞き手がどのように昔話の世界へ入り込んで行くか、またそのために昔話が語り手の掌のぬくもりの中で、いかに醸成されてきたかを、歴史や伝承の民俗社会の中で考えたものである。語り手もまた,聞き手との関係性の中で語りの展開に「作」を入れようとすることもあり、語り手と聞き手の関係の中から、一体何が見えてくるかを探ろうとしたともいえよう。
【主要目次】
序 章 語りの機能
第1節 語りの機能 
第2節 柳田国男・関敬吾その後 
第1章 語りの基層と異化効果
第1節 語りの異化効果と相乗効果
第2節 昔話における基層文化
第3節 歴史がつくったフリークス
第2章 語りの伝承
第1節 昔話の中近世そして今
第2節 昔話伝承の内と外
第3節 家の嫁から村の女に
第4節 昔話世界の豊穣ということ
第3章 作を入れる
第1節 語りに作を入れる
第2節 昔話と呪文
第3節 語りの零落
第4章 語り手と聞き手
第1節 語りの論理と聞き手
第2節 昔話語りの論理
第3節 昔話の語り手
第4節 昔話の語り手と聞き手
第5章 領域の拡大
第1節 ある義賊譚の造形の失敗
第2節 伝説と世間話の間
第3節 世間話と都市伝説の位相
第4節 村の世間話と都市の世間話
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